
領域概要

奈良先端大
我々生物が非生物である分子からどのように創られているかを理解することは、生命科学の最も根源的な問いへの答えであり、また地球上で生命が如何に誕生したかという謎を解くための重要なヒントになります。構造生命科学は分子から機能が創発する仕組みを原子レベルで詳細に記述する学問分野であり近年の生命科学に対する貢献が大きくなっています。しかし反面、分子構造の理解と巨視的なシステムとしての生命の理解には未だに隔たりがあることが問題となっています。一方、新たな学問分野として加速している合成生物学は、これまでに得られた膨大な遺伝学的、生化学的知見から生命現象を操作・再現することを目的としており、システムとしての生命現象に焦点を当てた研究領域です。奇妙なことに、未来の生命科学を牽引するこれら2領域の融合は過去に例がなく、その可能性についても議論されたことはありません。細胞を分子レベルで理解しようとする構造生命科学と、システムで理解しようとする合成生物学が融合することで、両領域が相補的に加速することは間違いありません。本研究領域は、構造生命科学と合成生物学、特に人工細胞研究を融合することで、構造情報をベースとしたマルチスケールでの構成的な生命システムの理解と、これらの融合から産出される高純度データを基とした次世代構造モデリング手法の開発を行います。これにより、既存の概念から抜き出た生命科学の学術変革を目指します。原子レベルの解像度でシステムとしての生命現象を理解し、さらに多要素が織りなす複雑な生命システムを精緻な分子動力学シミュレーションで直感的に理解する「構造生命システム科学」の未来を開きます。
